フレーズの表現

フレーズとは何でしょう? 音楽の世界ではあまりにも日常的に使われている単語ですが、その割にフレーズの実態はよく把握されていないように感じます(ぜひ、様々な音楽辞典でフレーズを見てください。どの辞書も似たような内容が書いてあります。当然間違ったことは書いてあるはずがありません、が、いまいちはっきりしません)。

フレーズの記述は様々ですが、端的にいえば、音楽のフレーズとは作曲者が伝えたかった内容を音符で記した文章(のようなもの)です。文章の文字も音符も、一個一個は特別な意味を持たないただの記号ですが、文章の文字が幾つが集まって単語になり、固有の意味が生じるように、音符も複数の音符が集まって音楽の単語(グループ・音楽における最小の表現単位)を作ります。

文章の単語と音楽の単語(グループ)の相違点は、文章の単語が具体的な意味を表しているのに対して、音楽のグループは抽象的な内容しか表せないことです。しかし、この音符の抽象性こそが音楽の解釈・表現に多様な可能性を生み出し、ひいては指揮者という役割の存在意義・価値を高めているのです!

指揮者の最も重要な役割は、作品(作曲者)が表現したかったことを聴衆に伝えることです。そしてその役割が端的に集約されたものこそが「フレーズの表現」です。

楽譜に記された音符をただ正確に音にするだけではフレーズは表現できません! それは例えていえば、英語の文章をアクセントもイントネーションもつけずに(稚拙な日本人の英語の発音のように)しゃべるようなものでしょう。指揮者が先ずなすべき事は、記号でしかない個々の音符を単語に整理し(グルーピング)、その結果必然的に生じる音の抑揚(これがとりもなおさず音楽の内容です)を見つけ、それらの中で何処が中心をなすのか(抑揚の重心)、更にはフレーズ相互のコントラストをいかに設定・表現するか、などなどです。

そして何よりも! フレーズに託された作曲者のエモーションの揺らぎに共感・共鳴して、それを自身のエモーションに置き換えて演奏者を統率する事でしょう。

言うは易しく行うは難しですが、その具体的な方法のいくつかを講習会ではご披露したいと思います。2日間という限られた時間の中でできる事には限界がありますが、50年以上アマチュアを指導・指揮してきた経験で得たノウハウを少しでも多く皆さんにお伝えしたいと思っています。

保科洋


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