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指揮法クリニックに参加された皆様へのお願いです

みなさま、無事にお家に戻られたことと思います。
決して交通の便が良いとはいえない加東市の小さなホールまで、お忙しい中お越し下さって、本当にありがとうございました!
Facebookなどでも、随所でこのクリニックの話題がポストされていたりして、大変嬉しく拝見しています。

そんな中で、今回のお願いは、もしかすると皆様の暖かい気持ちに水をさしてしまうのでは…と随分悩みましたが、敢えてお願いをすることにいたしました。

お願いというのは、以下の2点です。

  1. 「保科洋指揮法クリニック」または「保科洋」の名前を使用して、講習内容などを紹介する、といった趣旨の有料の講習会やイベントを開催することはどうかご遠慮ください。無料の講習会やイベントの場合も、広く一般に参加者を募る場合は、これらの名称の使用をご遠慮ください。
  2. 「保科洋指揮法クリニック」で配布された資料は、原則として、参加者のみなさまだけのもの、ということでご理解ください。

まず、1番目は、会計・税務処理の関係で、「保科洋指揮法クリニック」が利益を出す企画をしている、と判断されると大変困ったことになるのです…。その場合、我々が直接開催しているか否かにかかわらず、ということになります。

これだけの規模のイベントになりますと、万が一のときのためのイベント保険や、その他もろもろの会計処理で、収支決算書類の提出が必要になります。
このイベントは、実は、利益の出ないお勉強会、ということで開催しておりまして、そのため、関係者は、講師の保科洋、今回お手伝いいただいた武田元隊長や甘粕さん、パルス東京のみなさま、アルビレオの皆様などなど、一銭もギャラを得ておりません。
(それはそれで問題で、本来は経費として計上すべきなのですが、残念ながら収支決算が赤字スレスレなので、誰にも支払えない、という状況です)
そして、利益が出ないなら、ということで、税金や手数料が最小に抑えられています。

これが、後日監査が入り、実は利益をえていた、ということになりますと、大変面倒なことになります。スタッフ全員が本業を他に持っている状態で、本業を中断して運営している状況ですので、そういった面倒を処理する能力はない、というのが実情です。

もうひとつ、保科洋や保科洋指揮法クリニックの名前を広く一般に知らせて講習会やイベントをされる場合に、保科洋がその内容について保証できない、という問題があります。
保科洋から学んだことを、ご自身で消化し、ご自身のお名前と責任で語ってくださる分にはもちろん構いませんし、むしろそういう活動は広がっていってほしい、と願っています(それはまさに、保科洋が撒いたタネが芽を出す瞬間ですので!)

このあたりの線引きは大変難しいので、このお願いをするかどうかはかなり悩みました。
たとえば、講習会に参加してくださった先生やバンド指導者の方が、同じ学校の先生や、参加したくても日程の都合で参加できなかった近隣の学校の先生と情報を共有するための報告会や、勉強会を開きたい、ということはあると思います。
あるいは、同じ地域の参加者の皆様があつまって、復習会を行うとか。
そういった活動まで厳しく制限をつけるつもりは毛頭なく、むしろ積極的にやっていただけたら、と思っています。

ただ、その参加者をインターネット上の多くの方が見られる場所で一般募集して、ということになりますと、不特定多数の方が、保科洋や事務局が直接関われないところで、「保科洋の講習内容」として情報を得ることになります。

それは、事務局としては(内容が保証できないので)少々困る、ということと、もうひとつ、次回以降の参加者数の抑制につながりかねない、という問題があります。
さきほども白状したとおり、事務局の会計は火の車でして…
講習内容が、こちらのコントロールができない状況であまりに広く外部に漏れますと、指揮法クリニックの存続そのものが危うくなりかねない、ということをご理解いただけたら、と思います。

何が「公」なのか、といわれると本当に定義が難しいのですが、とりあえずは、ネット上で勉強会の参加者募集する場合は、保科洋または保科洋指揮法クリニックの名前は出さないでください、ということだと理解していただければ、おおかたは大丈夫だと思います。
(かといって、チラシを大量に印刷して、広範囲にばらまいて、、というのは困りますが(笑))
また、知り合いだけで内々にやる場合に、保科洋指揮法クリニックや保科洋の名前を出して、その内容を紹介するような企画であれば、さきほど申し上げた会計処理の関係で、料金はとらない、ということでお願いします。現実問題として、会場費はどうするんだ、とかいろいろあると思いますが、収支決算の面倒まで事務局が見切れないため、すみませんがあくまで無料、ということでお願いいたします。

もう1点、講習資料についてですが、こちらについては、常識の範囲内で個人使用としての複製はしていただいて結構です。上に記述したお勉強会での資料として使う場合には、全部ではなく、一部引用という形でしたらご自由にご利用いただいてかまいません。
ただ、講習会テキストセットを全部複製して勉強会参加者に渡す、というようなことは、JASRACへの申請の都合もありますので、ご容赦ください。

そういう事情で、これ以上は、「大人の判断をしてください」としかお願いしようがないのですが、もし「これは白か黒か、グレーか?」とお悩みのことがありましたら、遠慮なく我々スタッフにお尋ねいただければと思います。

言い訳みたいになってしまいますが、イベントを企画し、学んだことを広めていただく、というその熱意は大変うれしく思いますし、どんどんやっていただけたら、と思います! まさに、そういうきっかけになれば、と思って始めた企画ですので…

どうか、今後とも、保科洋指揮法クリニックをよろしくお願い申し上げます!

アンケートのお願い&次回予告?!

みなさまのおかげをもちまして、2020年の指揮法クリニックも大盛況のうちに終了することができました!

毎年全国からこの場所に帰ってきてくださる皆様、今回初参加の皆様、そしてギャラも出ないのに遠方からお手伝いに駆けつけてくださるスタッフの皆様、本当にありがとうございました!!

終了後、「アンケートはないのでしょうか、、」とお尋ねくださった方、申し訳ございません(汗)準備を忘れておりました(汗)
こちらにオンラインアンケートを用意しましたので、ご記入いただければ幸いです!

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSe846kGs6aQ7kA2yX6RB8LXNdfvV23u__KfqLsjU9tvqNQ8Jw/viewform

写真は、Facebookの方に上がっておりますので、ぜひご覧ください。
https://www.facebook.com/pg/HoshinaMusic/photos/?tab=album&album_id=2857644817589683

第4回は、とくにプレイヤー参加の皆様の実力が大幅にアップしたことに大変驚かされました。全国から集まった、リハーサルも2時間ほどしかしていないアンサンブルが、個性的な指揮者の棒に完璧に合わせ、かつ音色まで指揮に合わせて即座にコントロールできるというのは、ちょっと考えられない奇跡です。

思えば、第1回から参加してくださっている方は、総時間にして1回11時間x4で、すでに44時間もこのクリニックを履修していることになります。
これは、すでに音楽大学の2コマ分の授業に相当します。
そう思えば、とくにリピーター率が高いプレイヤー参加者のレベルアップもむべなるかな、なのかもしれません。

今回、武蔵野音楽大学・尚美ミュージックカレッジ専門学校講師で元陸上自衛隊中央音楽隊隊長の武田晃さんに(恐れ多くも!!)進行のお手伝いをお願いしたのですが、武田さんが、「ただの指揮法クリニックではなく、音楽を学ぶクリニックだ」とおっしゃってくださったのが、大変嬉しかったです。

はじめは、ただ保科洋の指揮法の種を残したい、少しでも教育現場でお悩みの先生方の助けになれば、と思って始めたこの講習会。正直、毎年参加者集めが大変で、「もうそろそろやめどきなのかな、、」と思うこともありました。
しかし、今回、我々スタッフの知らないところで、全国に、参加者の地域コミュニティができあがりつつある、ということを聞いて、今やめてしまうのはもったいない!! と強く思いました。

講習後も、それぞれが連絡を取り合い、指揮について、バンドの指導について、お互いに近況を報告したり、悩みを相談しあったりできれば、主催者としてこんなに嬉しいことはありません。

2021年は、思い切って5周年特別企画を計画しています!
詳細はまだ公表できませんが、日程は、2021年1月15日(金)〜1月17(日)の3日間を考えています。
平日を含みますので、参加が難しい方もおられると思いますが、次回は途中参加もOKのシステムにすることも考えておりますので、どうぞまた帰ってきてください!!!

お約束ですが、参加者が少ないと大赤字なので!!
今回のクリニックを楽しんでもらえた方には、ぜひ、お友達への宣伝をお願いいたします!!

参加のてびき

指揮法クリニック2020の参加の手引きをアップロードしております。
参加者のみなさまには、受付時に同じものを送らせていただいておりますが、今一度、下記リンクをご確認ください。

参加のてびき2020

課題曲スコアリンク(フルスコアを追加しました)

予習にご協力ください!

課題曲発表!(フルスコア追加)

保科洋指揮法クリニック2020で用いる課題曲です。

以下、講習曲順に記載

1)「冬景色」(condense score) (full score)

2)チャイコフスキー「白鳥の湖」より チャルダッシュ(condense score) (full score)

3)中田喜直「夏の思い出」(condense score) (full score)

4)チャイコフスキー「くるみ割り人形」より「花のワルツ」(condense score) (full score)

5)バーンスタイン「ウエストサイドストーリー」より

6)保科洋「愁映」(condense score) (full score)

7)リード「エル・カミーノ・レアル」より

8)ドボルザーク「スラブ舞曲」Op.72-2(condense score) (full score)

9)シベリウス「交響曲第2番」第3楽章(condense score) (full score)

10)ワーグナー「エルザの大聖堂への行列」(condense score) (full score)

11)岡野貞一 ふるさと(全員で合唱)
フルスコア

https://youtu.be/N1fH6plzFn4?t=830

恒例となりましたが、最後にみんなで合唱「ふるさと」が予定されています。ご聴講のみなさまも、ぜひ合唱でご参加ください!

合唱用楽譜はこちらです

また、この「ふるさと」が収録されている合唱組曲「ファンタジア・四季」の楽譜は、こちらのページからダウンロードできます。

 

 

 

指揮法クリニック聴講募集延長! 1月10日まで

まだ一般聴講の枠があいておりますので、募集を1月10日まで延長いたします!
ただ、記念品はもう制作に入らなければなりませんので、ギリギリにお申し込みの場合、記念品が足りなくなるおそれがございます。
確実に記念品をゲットするには、ぜひこの週末にお申し込みください!

お申し込み方法

(万が一記念品が不足した場合には、すみませんがお申し込み先着順で配布させていただきます。ご了承ください!)

予習にご協力ください!

保科洋の指揮法講習会に参加される皆さんへのお願い

このたびは、保科洋の2020年度指揮法クリニックにご参加いただきましてありがとうございます。本講習会は、限られた2日間の指揮法クリニックですので時間が非常に大切です!

そこで、講習会をスムースに進行させるために、以下の項目をお読みいただいて、クリニックで多用される用語等の予習をしておいていただきますよう、ご協力をよろしくお願いいたします。

 

フレーズとは

今年のテーマは「フレーズの表現」です! 文章構造において、ある完結された表現内容を表すセンテンス(文)が、単語や熟語及び接続詞、助詞など多くの文節や句で構築されているように、音楽の構造においても、ある程度完結された音楽的内容を包含している音群があります。この様な音群を「フレーズ」と称しています。「フレーズ」は通常、複数のグループや複合グループによって構築されています(後述グループの項参照)。

楽曲(の旋律)とは「フレーズ」が幾重にも連なって構築されています。ですから「楽曲を如何に表現するか」という命題は「フレーズを如何に表現するか」という命題を解決しなくては達成できません。指揮者の最も重要な役割は、この「フレーズ」を如何に解釈し表現するか、ということと言っても過言ではないのです(今年のテーマはこのことを念頭に設定しました)。

できれば皆さんも是非、音楽辞典などで「フレーズ」を調べておいてください。辞書によって記述の仕方が微妙に異なりますが、内容的には上記の記述内容を網羅しています。ただし、最も重要なことは、どの辞書もフレーズの長さについては断定していないことです! 実はフレーズの長さは決まっていません! 作曲者がその旋律を創案した際には、作曲者の頭の中ではそのフレーズの長さは決まっていたかもしれません、が、フレーズの長さ(内容も)は演奏によって如何様にも変えられる(変わってしまう)のです! 演奏者が、~このフレーズはここからあそこまで~、と思っていても、演奏の仕方によってはそうは聴き取れない(伝わらない)ことがあります!(演奏とは、聴き手に奏者の意図が伝わらなくては意味がありません!)

では、どうすれば意図したように伝えられるのか、、、これが今年の指揮法講習会のテーマの目標です。しかし限られた時間と制約の中で、この演奏者にとって永遠の、しかし 最も魅力的な課題である「フレーズ」の表現 に立ち向かうには限界があります。そこで少しでも時間を節約するために皆さんに事前予習をお願いする次第です。

以下に音楽表現の基礎となる事柄・用語などを列記しておきますので、必ず目を通しておいてください。

 

音楽は「音」という物理現象を媒体として意図を伝達する

これはあまりにも周知の事実ですが、当たり前すぎてあまり深く考えられてないように思います。しかし音楽は「音」が唯一の伝達道具なのですから、道具の特性(特に物理的な)を理解しておくことは、魅力的な音楽表現を志すためには避けて通れません! 「音」の物理的特性とは以下のようにまとめられます。

 

音の物理的特性(音の三要素)

音を生み出す(空気を振動させる)ためには、何らかの力学的エネルギーが不可欠ですが、その結果生 じた「音」は下記の三種の物理的特性によって特徴づけられます。

これを、この講習では「音の三要素」と呼んでいます。

  • 「振幅」 音の強弱:振幅が大きい(音を出すのに要したエネルギーが大きい)ほど音は強くなる。
  • 「振動数」 音の高低:振動数が大きい(エネルギー大)ほど音は高くなる
  • 「波形」 音色:波形が異なると音色が異なる。エネルギー量が変わっても音色は変化しない*

* 奏法を変えることで音色を変えることは可能です。ただし音符そのものには音色を記述する機能はありません! この事実は非常に重要です! それは、楽曲をどの様な音色で演奏するかは作曲者は記せないのですから、演奏者の感性に託している(託さざるを得ない)という事だからです。つまり演奏者の自己表現の最大の武器は音色なのです! 聴き手が音楽(演奏)に感動する非常に大きな要因の一つは、作品の内容にマッチした音色である事は誰もが経験している事でしょう。

 

音符の情報伝達機能(音符の三機能)

音楽を記述する文字は「音符」ですが、その音符は、驚くべきことに、下記の三種類のことしか記述できません*! これを、本講習では「音符の三機能」と呼びます。

  • 「音の長短」(音長):さまざまな音価(音の長さ)の音符を使い分けることで記す
  • 「音の高低」(音高):さまざまな音高の変動は五線譜上に音符で位置を指定することで記す
  • 「音の集積」(音積 **)
    • (a) 五線譜上に高さの異なる複数の音を時間的に同時に記す(和音など)
    • (b) 複数の五線譜を使って同じ音高の複数の音を時間的に同時に記す
    • (c) 上記 (a) (b) を組み合わせて記す

*変幻自在な音楽の表情がたった三種類の伝達機能しかない音符で表現できているって驚きですよね!

**(音積)とは(音長)(音高)にならった私の造語で、複数の音が時間的に同時に奏されるすべての状態を意味します。

 

音の三要素と音符の三機能の対応

音の三要素と音符の三機能は、ある仮定を導入することで、対応させることができます。
ある仮定とは、「振幅の大きさは、音長の長短で表現することができる」という仮定です。
端的に言えば、音の長さとは大きさ(強さ)の結果として生じた現象であるということです。

この仮定に至った背後の考察については、当日参加者に配布する講習テキストをご覧ください。

これにより、音符が音そのもののエネルギーの起伏を表現している(そういう機能を、音符は潜在的に持っている)とみなすことができるようになるのです。

  • 音の三要素(振動数)ー 音符の三機能(音高)
  • 音の三要素(振幅) ー 音符の三機能(音長)*
  • 音の三要素(音色) ー 対応なし(音符ではなく楽譜全体では、ある程度表現可能**)

*この対応は私の演奏解釈の考え方の根幹をなす仮定です! つまり、「音長」=「音量」!(注)
音のダイナミクスは強弱記号で記す以前に音長が示唆している、ということです。ちなみに、一般的には音の強弱は強弱記号で記すと理解されていますが、強弱記号で記せる音量は非常に目の粗い記述で、音長が表す内容に比べて繊細さで劣ります。特にフレーズ内の起伏のような繊細なニュアンスを必要とする箇所では強弱記号は不向きです(一音符ごとに強弱記号が指示されているような楽譜を想像してみてください。煩雑すぎると感じませんか?)

**オーケストレーションや和声の工夫によって、楽曲全体の音色のコントロールはある程度可能ですが、音符単体に音色を指定する機能はありません。

(編集注:経験的に、この仮定が当てはまらない例をいくつでも思いつける、という方もいらっしゃると思います。この問題は、記譜の音長ではなく、次項の「骨のリズム」を考慮して分析するとほぼ解決できます。)

 

骨のリズム

楽譜は、音符によって書かれています。リズムは、その音符の三機能のうち「音長」の組み合わせにより決定されます。

しかし、実は楽譜に書かれている音符とは、相当なパーセンテージで本来の音が分割(装飾)されているのです。「骨のリズム」とは、私の造語で、分割(装飾)されたと推測される音群について、その元の形を想定したときに現れるリズムを指します。

どの音が装飾された音で、どれがそうではないか、の見極めこそが演奏解釈で、経験と分析力を要求される課題ですが、どのように分析するかは、後日講習参加者に配布する講習資料をご覧ください。

「骨のリズム」の解釈は非常に重要です! その解釈によって「重心」(次項参照)の位置が変わってしまうからです。つまり、全く異なる表情になってしまうのです。

 

グループ(複合グループ)と重心

フレーズ内の個々の音符は、一般的には単独では音楽的な意味・内容を含めることが出来ません(例外はあります)。音符に音楽的な意味・内容を含ませるには、文章中の単語が複数個の文字で出来ているように、 複数個の音符をまとめて「グループ」化する必要があります(この作業をグルーピングといい、演奏解釈の基本中の基本になります)。

このグループが音楽における単語に相当します。さらに、複数のグループが集まって作られている「複合グループ」という表現単位もあります(文章の熟語あるいは合成語に相当)。

文章 の単語にアクセントがあるように、グループにも表現の核としてエネルギーが最大になる音が必ず存在し ます。この音のことを、このクリニックでは「重心」と呼びます。なお、複合グループでは「重心」は必ず複数個内在します。この「重心」が核になって、グループ内には必ずエネルギーの起伏が生じます。この様相は、山の頂上とその稜線を上り下りする状況に似ています。つまり頂上に登るにはエネルギーの付加(増加)が必要ですし、下る時にはエネルギーを減少させないと転げ落ちてしまうでしょう。

「フレーズ」は「グループ」および「複合グループ」が連なって構成されています(「複合グループ」がそのまま「フレーズ」になっていることもあります)。ですから「フレーズ」内には必ず複数のエネルギーの起伏が潜在していることになります。「フレーズ」の表現とは、端的に言えばこの「フレーズ」内のエネルギーの起伏を表現することです。

 したがって、「フレーズ」を表現するためには、先ず「重心」を探さなくてはなりません! 「重心」を見つけるためのヒント・ガイドについては、当日の講習資料をご覧ください。

 

楽曲分析(アナリーゼ)

グループやフレーズの接点は、楽譜に明記されているものではありませんが、音符の三機能と音の三要素の関係や骨のリズム、そして作曲者が楽曲に込めた情動(エネルギー)の収支を考慮すると、多くの場合、選択肢はいくつかに絞られます。この作業を楽曲分析(アナリーゼ)といいます。アナリーゼの視点・方法はその目的・用途によって異なりますが、演奏のためのアナリーゼとは、楽曲のフレーズを整理し(フレージング)、そこに潜在しているエネルギーの起伏を読み取って演奏のための青写真を作ることです。具体的には以下の3点でしょう。

  • フレージング(含、グルーピング) = フレーズ(グループ)の接点を見つける。
  • フレーズ内の起伏の整理 = 重心の設定、複数の重心のコントラスト(音量の設定)
  • 各フレーズの内容にマッチした音色の工夫(指揮者の感性が問われる)

これらは解釈によって微妙に結果が異なってきますが、それが音楽の特性であり魅力でもあります。指揮者にとって演奏解釈は命とも言うべき重要課題で、演奏解釈(つまり、その根拠となるアナリーゼ)こそが演奏家の存在価値そのものと言っても過言ではありません。

 

フレーズの表現

グループやフレーズの切れ目を判別し、それぞれの重心がどこであるかを決定したら、それをどのように表現するかを考慮します。
これは、音符の3機能を、音の3要素に変換する作業、ということになります。

まず、大前提として、重心に向かう音符ではエネルギーが増大、重心から離れていく音符ではエネルギーが減少する表現が必要になります。

この、エネルギーの増大・減少が演奏に伴わなければ、観客は「そこがフレーズ(の切れ目)である」ということを認識することができません。
したがって、程度の差こそあれ、フレーズを表現するということは、重心を中心にエネルギーの増大と減少を表現する、ということと同じ意味となります。

音の3要素のうち、音高は記譜された音から変更できませんので、エネルギーが増大・減少する様相を表現する場合には音量の変化を活用します。
音量の増大だけではエネルギーの増大幅を表現しきれない場合、重心に向かう過程でテンポが圧縮するアッチェランドや、重心頂点付近で音長が記譜より長くなるアゴーギクを伴うことがあります。
逆に、エネルギーが減少していく様子を表現する場合には、音量が小さくなりますが、音量の減少だけではエネルギーの減少幅を表現しきれない場合は、テンポがのびるリタルダンドやフェルマータなどを伴うこともあります。

より自然な表現にするには、文章を朗読する際に大事な単語の部分を特に強調するように、楽曲の表現でも、フレーズの中で一番表現したいグループ(とその重心)を決め、そこを中心に大きな山をつくるような表現を行います。しかし、その山に登る途中、降りる途中では、いくつかのグループがありますので、そのグループの重心近傍では小さな起伏が起きます。これはちょうど、自然の山並みが、よく見れば頂点だけでなく方々に小さな起伏があるのと似ています。

多くの場合、作曲家はフレーズの山がどこかを明示するために、クレッシェンドやディミニエンド、その他の音楽記号でフレーズの頂点のみを指示しています。

しかし、それは、その他の小さな起伏を無視してよい、という意味では決してありません。

だからこそ、演奏者はきちんと楽曲分析を行い、小さな起伏を自身のセンスで表現する必要があり、そこにこそ、演奏者の個性が発揮されるのです。

以上、講習会で実習する内容に必要な予備知識の一端を紹介しましたが、音楽の表現を文字で解説するのは限界があります。実際の「音」を伴わなければ、文字通り「絵に描いた餅」でしかありません。上記の具体的な内容はできる限り講習会で実演したいと思っていますので、ご協力を(特にプレーヤーとして参加される皆様には)お願いします。

それでは1月18日、加東市東条文化会館コスミック・ホールでお会いしましょう!! 楽しみにしております!

こちらのビデオもどうぞ!

講師からのメッセージ 〜 フレーズの表現とは

フレーズの表現

フレーズとは何でしょう? 音楽の世界ではあまりにも日常的に使われている単語ですが、その割にフレーズの実態はよく把握されていないように感じます(ぜひ、様々な音楽辞典でフレーズを見てください。どの辞書も似たような内容が書いてあります。当然間違ったことは書いてあるはずがありません、が、いまいちはっきりしません)。

フレーズの記述は様々ですが、端的にいえば、音楽のフレーズとは作曲者が伝えたかった内容を音符で記した文章(のようなもの)です。文章の文字も音符も、一個一個は特別な意味を持たないただの記号ですが、文章の文字が幾つが集まって単語になり、固有の意味が生じるように、音符も複数の音符が集まって音楽の単語(グループ・音楽における最小の表現単位)を作ります。

文章の単語と音楽の単語(グループ)の相違点は、文章の単語が具体的な意味を表しているのに対して、音楽のグループは抽象的な内容しか表せないことです。しかし、この音符の抽象性こそが音楽の解釈・表現に多様な可能性を生み出し、ひいては指揮者という役割の存在意義・価値を高めているのです!

指揮者の最も重要な役割は、作品(作曲者)が表現したかったことを聴衆に伝えることです。そしてその役割が端的に集約されたものこそが「フレーズの表現」です。

楽譜に記された音符をただ正確に音にするだけではフレーズは表現できません! それは例えていえば、英語の文章をアクセントもイントネーションもつけずに(稚拙な日本人の英語の発音のように)しゃべるようなものでしょう。指揮者が先ずなすべき事は、記号でしかない個々の音符を単語に整理し(グルーピング)、その結果必然的に生じる音の抑揚(これがとりもなおさず音楽の内容です)を見つけ、それらの中で何処が中心をなすのか(抑揚の重心)、更にはフレーズ相互のコントラストをいかに設定・表現するか、などなどです。

そして何よりも! フレーズに託された作曲者のエモーションの揺らぎに共感・共鳴して、それを自身のエモーションに置き換えて演奏者を統率する事でしょう。

言うは易しく行うは難しですが、その具体的な方法のいくつかを講習会ではご披露したいと思います。2日間という限られた時間の中でできる事には限界がありますが、50年以上アマチュアを指導・指揮してきた経験で得たノウハウを少しでも多く皆さんにお伝えしたいと思っています。

保科洋


指揮法クリニック受講生募集締め切りは11月30日必着です!

プレイヤー参加、聴講生はまだ枠があり、12月28日締め切りです。

お申し込みは、こちらのページで!

参加者のみなさまの声

第3回保科洋指揮法クリニック参加者のみなさまからの声をご紹介します。
アンケートにまだご回答されていない方は、お時間の許すときにご協力いただけたら幸いです。

アンケートページに移動

(しばらく上のアンケートフォームが使えなくなっておりました、大変申し訳ございません!)

 

 

学校現場での指導においてどのように演奏するべきなのか説明が以前よりできるようになりました。また、自分の指揮する姿を見ることが重要だとのお話から、自分の指揮をビデオで撮影するようになりました。すると、自分自身の問題点に気づくことができたり、生徒からは「先生が勉強している姿を見て自分ももっと練習しようと思った」と言われたこともあり、2次的な影響があることにもすこし驚きました。

 

楽曲分析とともに、指揮による表現の幅が広まった。

 

例え指揮をする対象が中学生であろうと、大人であろうと誰であろうとも、事前にスコアを読み込む事、暗譜する事、そして自身の中に音楽を持つ事がいかに重要であるかを改めて思い知りました。

 

指揮を止めるということを始めて教えていただいて、とても印象に残りました。実際の指揮にも取り入れています。

 

初回から参加させていただいていますが、クリニックで見たこと聴いたことは、その都度、次のクリニックまで1年かけてやる宿題だと思っております。そう考えて普段の活動に臨むことで、生徒達との演奏に何か一つでも手応えが感じられたとき、とてもやり甲斐が感じられること、そしてもっと学びたい、単純に指揮をもっとうまくなりたいという向上心につながっていると思っています。今回は第3回目で受講生として参加させていただきましたが、聴講生として、ただ見て聴いていたのとは違い、根底からしっかり見直す機会になりました。これまでは、なんとなくわかった気になって頭でっかちなっていたんだと思います。だからこそ、本当にありがたい機会を頂いたことに感謝しております。是非次回も参加したいです!!今後ともよろしくお願いします!!

 

楽譜の中身を読み込んだりアナリーゼすることへの意識が高まった

 

無駄な動きをしないこと。チカラの抜き方、手首のちょっとした使い方による加速のさせ方など 大変勉強になりました。

 

第1回目はプレーヤーとして参加させていただきました。指揮者の違いによって吹きやすさが違ったり、表現の引き出されかたに差があったりすることを奏者として実感することができました。 第2回目は受講者として参加させていただきました。1回目に奏者として学んだ内容を指揮台の上で実践することができ、また保科先生に直接ご指導いただいたことで、講習後自分の所属するバンドを指揮する際、大変レベルアップを感じることができました。 このクリニックは継続して受講することで、保科先生の指揮法や楽曲解釈についてより理解が深まり、自分自身の更なるレベルアップにつながると思います。

 

なお、2020年第4回保科洋指揮法クリニックのお申し込みが開始しております。
今年から消費税をいただくことになり、増税前後でお支払い金額が変わりますので、ご予定が決まりましたら、お早めにお申し込みください!

参加申し込みはこちら